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光と原子スペクトル:光子、エネルギー準位、水素の輝線

原子は、吸収し放出する光を通して、その構造を明らかにします。加熱した気体はあらゆる色で光るわけではなく、元素の指紋のような、いくつかの鋭い波長の光を出します。このガイドでは、波長、振動数、エネルギーを結びつける式を扱い、スペクトルが線になる理由を説明し、簡単な式で輝線を正確に予測できる唯一の例である水素原子を、例題を通して考えます。

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波長、振動数、光の速さ

光は電磁波です。波長 λ は山と山の間の距離で、振動数 ν はある点を1秒間に通過する山の数であり、ヘルツ(s⁻¹)で表します。真空中では、どの波長の光も同じ速さ c = 2.99792458 × 10⁸ m/s で進みます。これは NIST が掲載している、定義された厳密な値です。三つの量は c = λν で結ばれているので、波長と振動数は反比例します。一方を半分にすると、他方は2倍になります。

可視光は、およそ 400 nm(紫)から 700 nm(赤)までです。紫外線は波長が短く振動数が高く、赤外線は波長が長く振動数が低くなります。c = λν を使う前に、ナノメートルをメートルに換算してください。1 nm = 10⁻⁹ m です。

光子のエネルギーと光電効果

光は、光子と呼ばれるかたまりとして吸収され、放出されます。各光子はエネルギー E = hν = hc/λ をもちます。ここで h = 6.62607015 × 10⁻³⁴ J·s はプランク定数で、これも厳密な値です。波長が短いほど、光子1個あたりのエネルギーは大きくなります。同じ色でより明るい光は、光子の数が多いことを意味し、光子のエネルギーが大きいことを意味するわけではありません。

例題1。ナトリウムランプの黄色い光は 589.0 nm 付近です。その振動数は ν = c/λ = (2.998 × 10⁸ m/s)/(589.0 × 10⁻⁹ m) = 5.090 × 10¹⁴ Hz です。光子1個のエネルギーは E = hν = (6.626 × 10⁻³⁴ J·s)(5.090 × 10¹⁴ s⁻¹) = 3.373 × 10⁻¹⁹ J です。光子1モル分にするにはアボガドロ数 6.022 × 10²³ mol⁻¹ をかけて、2.031 × 10⁵ J、すなわち 203.1 kJ/mol になります。これは弱い化学結合のエネルギーに匹敵し、そのため可視光や紫外線は光化学反応を引き起こせます。

光電効果は、光子という見方を直接示しています。光が金属から電子を飛び出させるのは、各光子が少なくともその金属の仕事関数 Φ 以上のエネルギーをもつときだけです。余ったエネルギーは電子の運動エネルギーになります。KEmax = hν − Φ。

例題2。ある金属表面の限界波長が 540 nm だとします(この演習のために与えた値です)。その仕事関数は Φ = hc/λ = (6.626 × 10⁻³⁴ J·s)(2.998 × 10⁸ m/s)/(540 × 10⁻⁹ m) = 3.679 × 10⁻¹⁹ J です。405 nm の紫色の光の光子は 4.905 × 10⁻¹⁹ J なので、KEmax = 4.905 × 10⁻¹⁹ J − 3.679 × 10⁻¹⁹ J = 1.226 × 10⁻¹⁹ J です。有効数字3桁に丸めると 1.23 × 10⁻¹⁹ J、すなわち 0.765 eV です。650 nm の赤い光は、どれほど強くても電子を飛び出させません。光子1個のエネルギーが 3.06 × 10⁻¹⁹ J しかないからです。

原子が虹ではなく線スペクトルを示すのはなぜか

電球のフィラメントのような高温の固体は、連続スペクトルを放出します。高温で低圧の原子の気体は、特定の波長だけを放出します。原子内の電子は、特定のエネルギー準位しかとれません。電子が高い準位から低い準位へ移ると、原子はその差に等しいエネルギーをもつ光子を1個放出します。ΔE = hν。特定の差しか存在しないので、特定の波長しか現れません。

吸収はその逆です。白色光を低温の気体に通すと、原子は上向きの遷移に一致する波長をちょうど取り除き、それ以外は連続なスペクトルに暗線を残します。同じ二つの準位の間の遷移は、原子が吸収しても放出しても同じ波長になります。準位の差の組み合わせは元素ごとに固有なので、スペクトルによって炎、ランプ、遠い恒星の中の元素を特定できます。

水素のエネルギー準位とリュードベリの式

電子が1個の原子では、エネルギー準位は簡単な式に従います。OpenStax Chemistry 2e(6.2節)は Eₙ = −kZ²/n² としており、k = 2.179 × 10⁻¹⁸ J、Z は核電荷、n = 1, 2, 3, … です。エネルギーが負なのは、束縛された電子が、ゼロと定めた静止した自由電子よりエネルギーが低いからです。n が大きくなるにつれて、準位はゼロに向かって密集します。

電子が nᵢ からそれより低い n_f へ落ちるときに放出される光子のエネルギーは ΔE = kZ²(1/n_f² − 1/nᵢ²) です。これを hc で割ると、水素についてのリュードベリの式 1/λ = R(1/n_f² − 1/nᵢ²) が得られます。R = 1.097 × 10⁷ m⁻¹ です。

例題3。水素の n = 3 → n = 2 の輝線の波長を求めます。最後まで1桁余分に残して、ΔE = (2.179 × 10⁻¹⁸ J)(1/4 − 1/9) = (2.179 × 10⁻¹⁸ J)(5/36) = 3.0264 × 10⁻¹⁹ J です。hc = 1.9864 × 10⁻²⁵ J·m を使うと、λ = hc/ΔE = 6.564 × 10⁻⁷ m、すなわち 656.4 nm です。NIST Handbook of Basic Atomic Spectroscopic Data は、この赤い輝線を空気中で 656.3 nm としています。最後の桁の違いは、k の丸めと、空気中の光の速さがわずかに遅いことによるものです。

例題4。水素のイオン化エネルギーは、電子を n = 1 から n = ∞ へ移すのに必要なエネルギーで、k そのもの、すなわち原子1個あたり 2.179 × 10⁻¹⁸ J です。1モルあたりでは (2.179 × 10⁻¹⁸ J)(6.022 × 10²³ mol⁻¹) = 1.312 × 10⁶ J、すなわち 1312 kJ/mol です。NIST Atomic Spectra Database の値 13.598 eV を換算すると 1312.0 kJ/mol になります。

ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列

同じ低い準位で終わる輝線は、系列をつくります。どの系列でも、nᵢ が大きくなるにつれて輝線どうしの間隔は狭まり、電子が自由な状態から出発する系列の極限に近づきます。

  • ライマン系列は n = 1 で終わり、紫外線です。2 → 1 の輝線は 121.6 nm にあり、系列の極限は 91.2 nm 付近です。
  • バルマー系列は n = 2 で終わり、水素の四本の可視の輝線を含みます。nᵢ = 3, 4, 5, 6 に対して、それぞれ約 656、486、434、410 nm です。系列の極限は 365 nm 付近で、紫外域にあります。
  • パッシェン系列は n = 3 で終わり、赤外線です。4 → 3 の輝線は 1875 nm 付近です。

スペクトルの間違いと簡単な確認

これらの問題での誤りの大半は、単位の誤りか符号の誤りです。二つの確認でほとんどに気づけます。可視光の光子はおよそ 2.8〜5.0 × 10⁻¹⁹ J のエネルギーをもつはずで、エネルギー差が大きいほど波長は短くなるはずです。

  • c = λν や E = hc/λ を使うときに、波長をナノメートルのままにする。先にメートルに換算します。
  • リュードベリの式で nᵢ と n_f を入れ替えて使い、負の波長を得る。
  • 水素の輝線はすべて見えると思い込む。ライマン系列はすべて紫外線で、パッシェン系列は赤外線です。
  • 明るい光ほど速い光電子を飛び出させると考える。強度が変えるのは電子の数で、その最大エネルギーではありません。
  • Eₙ = −kZ²/n² をヘリウムや、電子を2個以上もつ原子に当てはめる。この式が成り立つのは、H、He⁺、Li²⁺ のような電子が1個の化学種だけです。
  • 光子1個あたりのエネルギーを kJ/mol に換算するときに、アボガドロ数を忘れる、あるいは2回かける。

ボーアの描像で説明できることと、その限界

電子が一定のエネルギーをもつ円軌道を回るとするボーアの水素原子模型は、水素の輝線と、He⁺ のようなイオンでの Z² に比例する変化を再現します。He⁺ では、水素のどの遷移エネルギーも4倍になるので、2 → 1 の輝線は 30.4 nm 付近にあります。

この模型は、電子を2個以上もつ原子では成り立ちません。電子間の反発が準位を変えるからです。また、電子が定まった軌跡を動くと描きますが、これは量子力学によって否定されています。現代の理論は、水素についてボーアのエネルギー準位を保ちつつ、軌道(orbit)を、電子が見いだされやすい場所を表す軌道(オービタル)に置き換えています。

制限事項と適切な利用方法

  • 水素の式は、微細構造や原子核の運動のような小さな効果を無視しており、これらは輝線を有効数字4桁目か5桁目で動かします。
  • NIST から引用した可視の輝線の波長は空気中の値です。計算値は真空中の値に対応するので、最後の桁がわずかに異なります。
  • このガイドでは、分子による赤外吸収や紫外可視吸収のような分子分光法や、ランベルト–ベールの法則は扱いません。
  • 光電効果の例では、仮定した限界波長を使っています。実測される仕事関数は、金属の種類とその表面の状態によって変わります。