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混成軌道とσ結合・π結合:分子の形の背後にある軌道

VSEPR は分子の形を予測し、原子価結合理論は軌道の重なりによってその形を説明します。このガイドでは、混成軌道が正四面体形、平面三角形、直線形の構造をどう説明するか、単結合、二重結合、三重結合がどのように σ 成分と π 成分に分かれるか、そして実在の分子で両方をどう数えるかを示します。最後に、酸素の磁性のように、代わりに分子軌道理論が必要になる場合を扱います。

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軌道の重なりとしての結合

原子価結合理論は、共有結合を、二つの原子の軌道が重なる領域にあるスピンが逆向きの2個の電子として説明します。重なりによって電子密度が原子核の間に集まり、そこで両方の原子核を引きつけます。一般に、重なりが大きいほど結合は強くなります。

重なり方には二通りあります。シグマ(σ)結合では、軌道が原子核を結ぶ線に沿って端と端で出会うので、電子密度はその軸上で最大になります。パイ(π)結合では、平行な二つの p 軌道が横並びに重なるので、密度は軸の上下にあり、軸を含む節面があります。単結合はすべて σ 結合です。

炭素の 2s 軌道と 2p 軌道が混ざらなければならない理由

炭素の価電子の軌道は、2s 軌道一つと 2p 軌道三つです。三つの p 軌道は x、y、z の方向を向き、互いに 90° をなしています。メタンの四つの C–H 結合がこれらを直接使うとすれば、三つの結合は 90° をなし、一つは異なるものになるはずです。実際には、CH₄ の四つの結合はすべて同一で、互いに 109.5° 離れています。

混成がこれを解決します。2s 軌道と三つの 2p 軌道すべてを数学的に組み合わせると、正四面体の頂点を向く等価な四つの sp³ 混成軌道が得られます。混成軌道の数は、つねに混ぜ合わせた原子軌道の数に等しくなります。各 sp³ 軌道には大きなローブが一つあり、水素の 1s 軌道とよく重なります。これが、混成軌道が強い σ 結合をつくる理由です。

立体数から混成を決める

混成は、原子の周りの電子領域の数、つまり VSEPR での立体数から決まります。孤立電子対は領域として数え、多重結合は1回だけ数えます。立体数がわかれば、混成は決まります。

孤立電子対も混成軌道を占め、結合どうしを近づけます。OpenStax Chemistry 2e(8.2節)は、アンモニアの H–N–H 角を 107.3°、水の H–O–H 角を 104.5° としています。どちらも sp³ で、結合角は理想的な 109.5° より小さくなっています。

  • 立体数2:sp、直線形、180°。s 一つと p 一つが混ざり、混成していない p 軌道が二つ残ります。各 sp 軌道の s 性は50%です。
  • 立体数3:sp²、平面三角形、120°。s 一つと p 二つが混ざり、平面に垂直な p 軌道が一つ残ります。s 性は33%です。
  • 立体数4:sp³、正四面体形、109.5°。s 一つと p 三つが混ざり、何も残りません。s 性は25%です。
  • 立体数5と6は、OpenStax のように sp³d、sp³d² と表されることがよくあります。これらは構造を表すラベルとして扱ってください。下の限界を参照してください。

σ結合とπ結合からなる二重結合と三重結合

エチレン H₂C=CH₂ では、各炭素は三つの領域をもち、sp² です。三つの sp² 軌道は、二つの水素ともう一方の炭素との σ 結合をつくります。二つの炭素に残った p 軌道は平行で、横並びに重なって π 結合をつくります。したがって二重結合は、σ 結合一つと π 結合一つです。アセチレン HC≡CH のような三重結合は、σ 結合一つと π 結合二つで、π 結合は sp 炭素上で互いに直交する、混成していない p 軌道の二組からできています。

π 結合は、二重結合が自由に回転しない理由を説明します。一方の端を 90° ねじると、p 軌道どうしが垂直になり、π の重なりが切れてしまいます。そのため cis-2-ブテンと trans-2-ブテンは、室温では互いに変換しない別の化合物ですが、C–C 単結合の両端は容易に回転します。

例題:アクリロニトリルとアスピリンの結合を数える

σ 結合と π 結合を数えるには、水素もすべて含めた完全なルイス構造を描きます。すると、結合の線1本ごとに σ 結合がちょうど一つあり、二重結合ごとに π 結合が一つ、三重結合ごとに π 結合が二つ加わります。

例題1。アクリル繊維の製造に使われるアクリロニトリル H₂C=CH–C≡N。σ 結合は、C–H が三つ、C=C の中に一つ、C–C に一つ、C≡N の中に一つで、合計6です。π 結合は、C=C の中に一つ、C≡N の中に二つで、合計3です。混成は、二重結合の両方の炭素が三つの領域をもつので sp²、ニトリルの炭素は二つの領域をもつので sp、窒素は結合の領域一つと孤立電子対一つをもつので、これも sp です。確認として、価電子は 3(4) + 3(1) + 5 = 20 個で、9本の結合が18個を保持し、窒素の孤立電子対が残りの2個を保持します。

例題2。ベンゼン環に二重結合を交互に描いたアスピリン C₉H₈O₄。σ 結合は、環の C–C が6、環の C–H が4、カルボキシ基とその環へのつながり(環の C–C、C=O、C–O、O–H)が4、エステル基(環の C–O、O–C、C=O、C–CH₃、C–H 三つ)が7です。合計で 6 + 4 + 4 + 7 = 21 個の σ 結合になります。π 結合は、環に3、各 C=O に1ずつで、合計5です。確認:アスピリンには原子が21個と環が一つあり、つながった構造はどれも(原子数 − 1 + 環の数)個の σ 結合をもつので、21 − 1 + 1 = 21 です。電子の数も合います。26本の結合が52個の電子を保持し、四つの酸素が8組の孤立電子対、すなわち16個の電子を保持し、9(4) + 8(1) + 4(6) = 68 です。炭素のうち8個は sp² で、sp³ はメチル基の炭素だけです。

π結合はσ結合と比べてどれくらい強いのか

OpenStax Chemistry 2e の表7.3にある平均結合エネルギーを見ると、二つの原子の間に結合を加えるほど、増える分は小さくなることがわかります。炭素–炭素結合では、C–C が 1.54 Å で 345 kJ/mol、C=C が 1.34 Å で 611 kJ/mol、C≡C が 1.20 Å で 837 kJ/mol です。

例題3。引き算をすると、加わる π 結合一つあたりのおおよそのエネルギーが得られます。一つめの π 結合は 611 − 345 = 266 kJ/mol を加え、二つめは 837 − 611 = 226 kJ/mol を加えます。どちらも C–C の σ 結合の 345 kJ/mol より小さく、これは横並びの重なりが端と端の重なりより弱いためです。二重結合は単結合の2倍ではなく、1.77倍の強さしかありません。付加反応で切れるのは弱いほうの π 結合で、そのためアルケンは Br₂ や HBr を、また金属触媒があれば H₂ を容易に付加します。これらの差は見積もりとして扱ってください。平均結合エネルギーは、多くの異なる分子の値をまとめたものです。

非局在化したπ電子と混成軌道の限界

ベンゼン C₆H₆ では、どの炭素も sp² で、環に垂直な混成していない p 軌道を一つもっています。六つの平行な p 軌道が環をぐるりと一周して重なるので、六つの π 電子は三つの二重結合に固定されず、環全体に広がります。六つの C–C 結合はすべて同じ長さで、典型的な単結合と二重結合の長さの中間です。

共鳴は π 電子と孤立電子対を組み替えますが、σ 結合は決して組み替えません。そのため、ベンゼンの炭素のような原子では、どの妥当な構造でも混成は同じになります。OpenStax はベンゼンについてこの点を明示しています。アミドの窒素のように、別の構造では孤立電子対が π 結合になる原子には注意してください。その領域の数は構造によって変わり、観測される平面の構造は、それが sp² であることを示しています。非局在化は原子価結合理論では扱いにくくなる領域で、分子軌道理論のほうがすっきりと説明できます。

原子価結合理論は、すべての電子を結合か孤立電子対の中で対にするので、O₂ には不対電子がないと予測します。実際には液体酸素は磁石に引きつけられ、O₂ に不対電子があることを示しています。分子軌道理論は、分子全体に属する軌道を組み立てます。結合次数は、結合性軌道と反結合性軌道にある電子の数の差の半分です。O₂ では、12個の価電子が結合性に8個、反結合性に4個入るので、結合次数は (8 − 4)/2 = 2 です。最後の2個の電子は、スピンを平行にそろえて別々の二つの π* 軌道に入り、これが常磁性を説明します。N₂ では (8 − 2)/2 = 3 で、三重結合と一致します。

混成の誤りと、その見つけ方

誤りの大半は、ルイス構造を省くことや、領域を数え間違えることから生じます。まずその原子の σ 結合と孤立電子対を数えましょう。混成はその数だけから決まります。

  • π 結合を立体数に数える。領域として数えるのは σ 結合と孤立電子対だけです。
  • 孤立電子対を忘れ、NH₃ の窒素を sp³ ではなく sp² に見てしまう。
  • 二重結合を σ 結合二つとして数える。二重結合はすべて σ 一つと π 一つです。
  • 骨格式や示性式で σ 結合を数えるときに、水素を数え落とす。
  • 二重結合をもつ炭素はすべて sp² だと思い込む。二重結合を二つもつ CO₂ の中心の炭素は、領域が二つなので sp です。
  • 共鳴構造によって原子の混成が変わると考える。共鳴が動かすのは π 電子で、σ 結合ではありません。

制限事項と適切な利用方法

  • 混成は、観測される構造に合うように選ばれたモデルであり、それ自体で構造を予測するものではありません。形については VSEPR か実験データを使ってください。
  • 五つと六つの領域に対する sp³d と sp³d² というラベルは、一般化学ではよく使われます。現代の計算化学の研究では、典型元素の化合物で d 軌道の関与はほとんど見られないので、これらは文字どおりの軌道のつくり方ではなく、ラベルとして扱ってください。
  • 表7.3の結合エネルギーは多くの化合物についての平均なので、そこから導いた π 結合のエネルギーは近似値です。
  • 分子軌道理論は、ここでは O₂ と N₂ を説明するためだけに導入しています。完全な MO 図、異核分子、そして B₂、C₂、N₂ で軌道の順序を変える 2s–2p の混合は、このガイドの範囲を超えます。