換算係数は1が姿を変えたもの
1 L = 1000 mL のような等式は、両辺が同じ量を表していることを示します。したがって、一方の辺をもう一方で割ると、ちょうど1に等しい比が得られます。(1000 mL / 1 L) = 1 であり、(1 L / 1000 mL) = 1 です。ある量に1を掛けても量は変わらず、表し方が変わるだけです。これがこの方法の根拠のすべてです。
1つの等式からは2つの比が得られるので、手持ちの単位が約分されて、求めたい単位が残る向きを選びます。0.355 L をミリリットルに換算するには、0.355 L × (1000 mL / 1 L) = 355 mL と書きます。L が分子に1回、分母に1回現れるので、リットルは約分されます。単位が約分されなければ係数は逆さまであり、計算する前にそれがわかります。
厳密な等式と測定による等式
定義であり、厳密な等式もあります。すべてのSI接頭語(1 km = 10³ m、1 µg = 10⁻⁶ g)、1 L = 1 dm³、1 mL = 1 cm³、1インチ = 2.54 cm などです。厳密な係数が有効数字を制限することはありません。密度や硬貨1枚の質量のように、測定から得られる等式もあり、その有効数字は他の測定値と同じように数えます。
接頭語の係数は、上下を逆にしてしまう誤りがもっとも多い原因です。1 µg = 10⁻⁶ g は、1マイクログラムが1グラムの100万分の1であると読んでください。小さい単位に1を付け、大きい単位に10の小さいべき乗を付けます。同じことですが、1 g = 10⁶ µg です。1 g = 10⁻⁶ µg と書くと、関係が逆になり、10¹² 倍の誤りになります。
- 長さ:1 m = 100 cm = 1000 mm、1インチ = 2.54 cm(厳密)。
- 体積:1 L = 1000 mL = 1 dm³、1 mL = 1 cm³、1 m³ = 1000 L。
- 質量:1 kg = 1000 g、1 mg = 10⁻³ g、1 µg = 10⁻⁶ g。
- 時間:1 h = 60 min = 3600 s。
複数の係数を1行でつなぐ
出発の単位と目的の単位を直接結ぶ等式がないときは、係数を連鎖させて掛けます。各係数が、直前の係数で導入された単位を約分します。計算する前に連鎖全体を書いておくと、約分を一目で確認でき、途中での丸めも避けられます。
例題1。ポンプが溶媒を 1.75 mL/min で送り出します。流量は1時間あたり何リットルでしょうか。分子と分母で1つずつ、2つの単位を変える必要があります。1.75 mL/min × (1 L / 1000 mL) × (60 min / 1 h) と立てます。ミリリットルが約分され、分も約分され、L/h が残ります。計算は 1.75 × 60 ÷ 1000 = 0.105 L/h です。両方の係数は厳密なので、答えは 1.75 mL/min の有効数字3桁を保ちます。
ここでは簡単な妥当性の確認が役立ちます。1時間は60分なので、1時間あたりの体積は1分あたりより大きく、約 105 mL のはずです。リットルで表すとおよそ0.1リットルで、0.105 L/h と一致します。
2乗・3乗の単位には2乗・3乗の係数が必要
cm³ のような組立単位は cm × cm × cm を意味します。これを換算するには、次元ごとに長さの係数を1回ずつ適用する必要があります。そのためには、係数全体、つまり数値と単位をまとめて、対応するべき乗にします。(1 m / 100 cm)³ は 1 m³ / 10⁶ cm³ に等しく、1 m³ / 100 cm³ ではありません。
例題2。収納棚の内部の体積が 0.0465 m³ です。これを立方センチメートルとリットルで表します。立方センチメートルでは、0.0465 m³ × (100 cm / 1 m)³ = 0.0465 × 10⁶ cm³ = 4.65 × 10⁴ cm³ です。リットルでは、1 m³ = 1000 L を使って、0.0465 m³ × (1000 L / 1 m³) = 46.5 L となります。検算として、4.65 × 10⁴ cm³ × (1 mL / 1 cm³) × (1 L / 1000 mL) でも 46.5 L が得られます。
速度などの割合や、その他の複合単位でも考え方は同じです。N/m² の圧力、m/s の速さ、mol/L の濃度は、それぞれの単位を別々に、指数を守って換算します。
質量と体積をつなぐ橋としての密度
密度は質量を体積で割ったものなので、どちらの向きでも換算係数として使えます。(g / mL) は体積を質量に、(mL / g) は質量を体積に変えます。接頭語の係数と違って、密度は測定値であり、温度に依存し、有効数字を制限します。
例題3。OpenStax Chemistry 2e(表1.4)は、室温付近でのグリセリンの密度を 1.26 g/cm³ としています。グリセリン 15.0 g の体積はいくらでしょうか。グラムが約分されるように密度を逆数にします。15.0 g × (1 cm³ / 1.26 g) = 11.9 cm³ で、1 cm³ = 1 mL は厳密なので、これは 11.9 mL です。電卓は 11.905 と表示し、両方の入力の有効数字は3桁です。
今度は逆向きに、より長い連鎖で考えます。グリセリン 2.50 L の質量は何キログラムでしょうか。2.50 L × (1000 mL / 1 L) × (1 cm³ / 1 mL) × (1.26 g / 1 cm³) × (1 kg / 1000 g) = 3.15 kg です。水1リットルの質量は約 1 kg で、グリセリンは水より少し密度が高いので、2.5 kg より少し大きい値は妥当です。
温度目盛りと、オフセットを伴うその他の換算
因子ラベル法が扱えるのは比例関係、つまり一方の単位での0が他方でも0になる関係です。摂氏、華氏、ケルビンの目盛りは零点が共通ではないので、温度の換算にはオフセットを加えた式が必要です。T(K) = T(°C) + 273.15、T(°F) = 1.8 × T(°C) + 32 です。たとえば 21.47 °C は、21.47 + 273.15 = 294.62 K、1.8 × 21.47 + 32 = 70.65 °F です。
温度の変化は別です。2つの温度を引き算するとオフセットが打ち消されるので、1 °C の変化は 1 K の変化に等しく、1.8 °F の変化に等しくなります。オフセットはありません。熱や反応速度の式が T ではなく ΔT を使うときは、この違いを覚えておいてください。
換算のミスとその見つけ方
すべての係数が正しい等式であれば、次元解析は最終的な単位が正しいことを保証します。ただし、正しい量を選んだことまでは保証しないので、単位の確認と大きさの見積もりを組み合わせてください。
掛け算の前に、数値が大きくなるべきか小さくなるべきかを判断します。リットルからミリリットルのように小さい単位へ換算すると数値は大きくなり、大きい単位へ換算すると小さくなります。結果が逆の方向に動いたら、どれかの係数の数値が逆になっています。接頭語を覚え違えると、単位が約分されているように見えても、まさにこの誤りが起こります。
- 係数の上下の逆転:消したい単位が残っているなら、その係数を逆にします。
- 接頭語の取り違え:1 kg = 1000 g のように、小さい単位のほうが数が大きいことを確認します。
- べき乗の忘れ:面積や体積の係数は、数値も含めて2乗・3乗にしなければなりません。
- 計算の途中で単位を省く:約分漏れに気づけるよう、すべての数値に単位を書きます。
- 測定による係数を厳密と見なす:密度や1個あたりの測定質量は有効数字を制限します。
- 単位は合っているが物理的に誤り:溶液のグラムも溶質のグラムも g として約分されるので、各量が何を表すかをラベルに書きます。
制限事項と適切な利用方法
- 次元解析が確認するのは単位の整合性であり、化学的な正しさではありません。単位が完璧でも、誤った物質や量を使っている計算はありえます。
- 密度は温度や組成によって変わります。ここで使ったグリセリンの値は室温付近のもので、有効数字は3桁しかありません。
- 温度のようにオフセットを伴う換算や、pHやデシベルのような非線形の尺度は、比を掛けるだけでは扱えません。